ユーザー中心ウェブサイト戦略

シーザーサラダ

ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践

ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践

同僚が持っていたので借りて読んでみたら目から鱗で、思わず自分でも買ってしまった本。
サブタイトルが「仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践」とあるけれど、ユーザービリティの持つ「ユーザーの使いやすさ」という意味合いから、高齢者や障害者などハンディを持つ人の利用しやすさといったアクセシビリティを連想してしまったり、ユーザー中心という語感からクライアントや製作者無視の理想論だったり(そんな予算取れねーよ的な発想だったり)する事を思い浮かべてしまうけれど、この本のアプローチは、マーケティング戦略からブレイクダウンしたウェブ制作手法であり、きわめて攻めの姿勢のユーザビリティで有る点が目から鱗ポイントでした。

WEBの制作となると、まだクライアントの担当者や代理店のリテラシーが低い事もあり、パンフレットをWEBで展開したり、カートを作るというレベルで終了してしまうケースが多いのだけれど、通常プロモーションや流通は、マーケティングミックスの4P(製品:Product、価格:Price、プロモーション:Promotion、流通:Place)の中の一部と捉え、それぞれのパートを顧客に最適化し、全体として適切なタイミングで適切なコミュニケーションが顧客と取れるようにして行くべきだと思います。
つまり市場の定義、製品の設計から価格設定、プロモーション、購入から使用し続けるところまで含めて、ユーザーシナリオを立てて、それぞれの場面でどのようにユーザーに訴求すべきか検討し、そもそもユーザーニーズがあるのかの検証も含めその結果をユーザーシナリオにフィードバックしながら戦略を最適化していく中にウェブを組み込むという感じ。
パンフをウェブに置き換えても、顧客はパンフとまったく異なる状況でウェブページにアクセスしてくるので、訴求方法もその状況に合わせて最適化すべきであると。
この本は、下記5フェーズでの仮説立案とユーザーテストによる検証のPDCAサイクルでユーザーシナリオを最適化していく手法を、ほぼフレームワークとして使えるレベルで書かれいます。第一部前半に関しては概要なので、わりとぼんやりと書かれていて、何だこの本と思いかけてしまったのだけど、第一部後半や第二部はやばいw

  1. サイト戦略
  2. 基本導線
  3. 詳細画面設計
  4. デザイン
  5. 運用

たいていユーザーテストというと詳細画面設計の段階で、間違った操作をしないかや、素早く目的地にたどり着けるかという検証を思い浮かべがちですが、この本では既存のメディアも含めマーケティングミックスの中でWEBはどのポジションにあるのか、つまりウェブに訪れる際のユーザ心理はどのような状態にあるのか、どのようなときに訪れるのか?という事を全体戦略からブレイクダウンしユーザーテストやヒアリングで検証していくという形をとります。
制作側に居るとクライアントとの初回ヒアリングの段階から、つい「ウェブでどのように展開したら良いのだろう?」とウェブに限定して考えがちですが、クライアントは「これを売りたい」とか「広めたい」という考えが根底にあり、なんとなくウェブもやったほうが良いよなというレベルの認識でウェブ屋に仕事を依頼してくるので、本来ならばその製品を売るためにはどのようなプロモーションが必要か?そしてそのプロモーション戦略の中ではどのようにウェブを活用するのが効果的か考え、ウェブサイトの提案をしていくべきだと思います。物によってはウェブで展開する必要ないよね、という事にもなると思いますが、必要ないものを作ってみんなアンハッピーになるよりは良い気がしたり。
この本を読むと自分達の枠組みのみ(ウェブ限定)で考えればいいやという発想の外に出られて、その事で返って効果的にウェブの使い方を発見できる書だと思います。
ユーザーテストの予算が出ないよ、という意見もあると思いますが、まずは隣の同僚にテストしてもらうだけでもまったく違うし、ユーザーシナリオを立ててヒアリングする事は友達に聞くことでも純分効果あります。そもそもユーザーテストはウェブサイトの費用対効果を高めるためにこそ必要なんだという発想があるとないとでは大違いです。