スポーツの見方を変える

スポーツの見方を変える (平凡社選書)

スポーツの見方を変える (平凡社選書)

オフサイドはなぜ反則か』等で有名な中村敏雄の本。この人の視点にはいつも共感を覚えるのだけれど、この本もまた然り。具体的にどうしたら良いという明快な解は書かれていないけれど、現在の日本のスポーツの在り方みて考えるべき問題点が色々と書いてある。
ここ数年自分はスポーツの文化的位置付け(というかスポーツって何ぞや?という疑問)を勉強したり体験したりしながら考えているのだけれど、音楽を真面目にやっていた頃と同じ根っこの問題に行き当たる。それは明治時代に欧米列強に追いつけ追い越せという姿勢で日本の文化を投げうって西洋からさまざまな文化を取り入れた事による弊害(矛盾)がいまだに根深い問題として残っているという事。
自分がスポーツに対する違和感が消えないのは、自分達の生活に根ざしたスポーツ観を育ててこなかった事によるのかもしれないなぁ、と。
バスケットが生まれた当時は両チーム合わせても50点にも満たなかった得点が、時とともにスピードや緊張感を求めルールを変えていくことでいまや両チームあわせて200得点という事も少なくなくなっているという事実は、人々の生活観・皮膚感覚がそのままスポーツに反映されているとう事だと思う。それはグローバル化社会の中でMLBや日本代表に目が行くのは、普段から世界の中での日本人というものを意識せざるをえない状況になりつつある中で、応援の対象が「世界の中で活躍する日本人」に行き着く事からも推察される。つまりスポーツというのは百数十年前に誕生した近代スポーツの形のまま在るのではなく、同時代に生きる人たちの皮膚感覚に呼応しながら変化していく生活観を伴った文化であると思うが(またそういう中から生まれた文化なんだろうが)、果たして自分達は、日本とは異なった生活の中から生まれ育った西洋近代スポーツを本質的な部分で理解できるのだろうかと思ってしまう・・・。今作っている(再構築している)最中なのかもしれないけれど、もう一回自分達の文化を見直してみる必要があるのかもなぁ。